映画レビュー : してログ


インターステラー

前知識なしで鑑賞しましたが、近年にしては珍しい「2001年宇宙の旅」のようなハードSF作品でした。 この手の作品が好きなので2時間半という長編作品でも、最後までどっぷりその世界観に浸ることができました。 地球の終焉を救うミッションに旅立つ父親と、それを理解できずにすれ違い空いた娘との溝、それを天文学的な距離と相対論的な時間の遅れが容赦なく引き裂いていきます。 果たして、地球の危機を救うことができるのか、娘との再会の約束は守れるのか、超大な宇宙のスケールの中で描かれる人間ドラマの結末は...。

天文学や物理学に基づいた映像表現

後で調べた情報によると、理論物理学者の協力でブラックホール等の映像は、物理計算によって作られているそうです。 本編中でもブラックホールや宇宙空間での無音表現などの天文知識、ワームホールといった実際に研究されている理論などを基に丁寧に作られているなと感じられました。 そういった光る点がある一方、残念な部分も少なからずあり、一流のハードSFかというと自分の中では多少落ちるかなという印象です。 他のレビューでは絶賛の声が多いので、ここではあえて変だなと思った点を書いていきます。 とはいっても、SF映画として大変面白かったので、些細な事だと思います。

地球存亡の危機なのに切迫感が無い

これはきちんと設定して欲しかったと思います。 物語上では、食糧危機の発生としか分からない地球存亡の危機ですが、どのような理由で発生してどういう状況に置かれているのかが語られていません。 また、どうしてそれを救うミッションへ父親が参加しなければならないのかも適当にされています。 正直に言うと、地下組織化したNASAに潜入して、あのロボットが出てきた時点で「あ~あ、B級SFかよ」って思ったくらいです。 ご都合主義的なチープなSFが展開されるのかと思って冒頭部分を観ていたので、見終わってから損したなと思いました。 ここら辺が丁寧に描かれていれば、最初から作品の世界に引き込まれていったのに、とても残念です。

地球からは多段ロケット、他の星からはあれれ?

地球からの打ち上げは、多段式ロケットを使って軌道上の宇宙船まで向かいます。 しかし、移住先の惑星からは着陸船だけで軌道上の宇宙船まで上昇できてしまいます。 大気も無く重力も1/6の月とは違い、訪れた惑星は大気もあり1Gに近いように見えますので、そうであれば多段式ロケットの推力が必要なはずです。 もし、あの着陸船だけでそれができるのだったら、なぜ地球から離脱するときも使わないのでしょうか?

土星を見せたいだけのご都合設定

まあ、ワームホール自体が理論的予測に過ぎないので、どう描いてもいい対象ではあるのですが、もう少しうまく描いて欲しかった。 私だったら太陽系外か外縁部に置いて、土星はスイングバイの中継点として使いますね。 というか、SF作品で他の惑星に行くための軌道をまともに描いたものが皆無です。 たいてい直線的に向かっているように描かれていますが、本来であればスイングバイなどを使って軌道旋回速度を増すことで外惑星に向かうように描かなければ変です。

ワームホール先の探査ミッションがあり得ない

クーパーのミッションの前に、ワームホールを使った人類移住先を探す複数のミッションがあったという設定なのですが、クーパーらは地球の科学技術に毛が生えた程度の技術で恒星系を渡り歩いているように見えます。 いったん土星に戻って、ワームホールを使うような描写も見られないから、向こうで別の恒星系に移動するのに地球のテクノロジーしか無い訳です。 もし、恒星間航行が可能なテクノロジーがあるのならワームホールは要らないことになります。 ブラックホールを軌道旋回する複数の恒星系があるとか、恒星サイズのブラックホールとの連星系の中の惑星だったとか、理解しようとしましたが無理でした。

移住先惑星での津波が唐突過ぎる

あの津波はどういう理由で発生したのでしょうか? あまりにも唐突過ぎて説明も何もなく、科学考証をウリにしているなら無くてよいシーンでした。 百歩譲って巨大津波があったとしても、あれだけの高さの津波が押し寄せてくるのであれば、強力な引き波が発生するはずです。 降り立った水深20cmしかない大海原も違和感ありまくりですが、そんな水深しか無いなら海底が露出するほどの表現が無ければ変です。

ブラックホールは必要だったか

物語上ブラックホールの必要性がありません。 そもそも移住可能な惑星を探すのであれば、ブラックホールのような未知の恒星系は避けるはずです。 ワームホールを維持するのにブラックホールが必要で、そこしか行けないというような必然性が必要でした。 ただ、物理計算によるブラックホールのイメージを見せたいだけだったのでしょう。

それと、ブラックホールを直接軌道旋回する複数の惑星が探査対象だったのでしょうか? ブラックホールの影響があるのは最初の水の惑星だけ、というような表現だったと思いますし、そうであればどの惑星もブラックホールの影響下にあるはずなので辻褄が合いません。 ここら辺の世界観が想像できないのが最も残念な点であり、タイトルにインターステラーと付けるくらいですから、丁寧に描いて欲しかったです。

強い重力場での時間の遅れ

最初の惑星はブラックホールの影響下にあり、時間の流れが遅くなるということです。 おかしいのは、その惑星の軌道上の宇宙船と着陸船の間でそれが顕著に表れるということです。 どちらもブラックホールの影響下にあるはずなので、時間の遅れはその惑星の重力による影響しか差が無いはずです。 どうせ描くのだったら、終盤のブラックホールを使った重力ターンのところで、この軌道を取ると時間のずれが何万年にもなり今生の別れになる、みたいなスケールでお願いしたかったです。

プランAとB、重力理論の関係が良くわからない

現在の地球人を移民させるプランA、遺伝情報を使って文明再生をさせるプランB、プランAは重力理論の解決が絡んでたような話だったと思うが忘れてしまった。 探査前にはプランAとBが計画され、元々プランBしか実現性が無いと分かっており、プランAは重力理論の解が不可能だと分かってて他の人類に希望を持たせるだけに計画された、というような内容だったと思います。 後に高次元空間から届いたブラックホールの特異点の観測データを使って、重力理論の別解が分かりプランAが実行可能だと判明した、と無理やり理解しましたがどうでしょう。

あと、最後のシーンに出てくるスペースコロニーは、あれ何なんでしょうね。 移民船には見えなくて、コロニーで解決するんだったら、重力理論の下りもいらないように思うし、移民計画も必要無さそうに思うのです。 それに、クーパーにアメリアの元に行くように言うということは、あれは移民船で無いと言うことだと思います。 うーん。 整理すると、プランAは重力理論の解決が障害だったけど、それを解決しときながらコロニーを建設して太陽系に留まることにした、クーパーはアメリアと合流してプランBを実行するようにした、というのが結末という理解で良いのでしょうか。 ちょっとすっきりしませんね。

取って付けたような人間ドラマ

基本的な主軸は、父と娘の絆の物語であるのは良いのですが、そうであれば最後にアメリアの元へという部分は要らないと思います。 そもそもアメリアとクーパー(父)がロマンスがあったのか無かったのかも分からないくらい、印象に残った絡みがありませんでした。 もし描くのなら、父と娘が相対論的時間に引き裂かれるのに対し、アメリアとは天文学的な距離で引き裂かれる、とかにしたら面白かったでしょう。 まあ、マーフと再会したところでジ・エンドというのが綺麗だったと思います。

チープなロボット

キャラクターとしては魅力あると思いますが、ターズやケースといったロボットがB級SFっぽさを出しています。 ゴールドライタンのような箱、中に人が入ってるような動き、不器用で実用性が無さそうな腕、チープなディスプレイ、どうしてこうなったんでしょう。 AI的なコンピュータは出てきてもいいですが、動かなくていいと思います。

ワームホールと異次元人

どういう理由でワームホールが出来たのか、まったく説明が無かったと思います。 すべての設定を説明しなくても良いとは思いますが、物語の根幹部分については何らかの説明は付けて欲しかったです。 ワープ中に接触してきたのが異次元人だと思ってたら、結局クーパー自信だったし、高次元空間のシーンでも異次元人の存在を匂わせて無かったと思います。 あと、マーフの部屋の超常現象はクーパーの仕業だったまでは良くて、異次元人=クーパーだったというのは上手いなと思いました。 そうだとすると、余計ワームホールを作ったのは誰か、クーパーを戻したのは誰か、気になってしまいます。 やはり異次元人はいて、我々とはコミュニケーションを取ることが出来なかったのだと解釈しておくことにします。

総合評価:★★★★☆

このレビューはあえてダメな点を書くという趣向ですので酷評しているように見えますが、総合評価は納得の高得点です。 久しぶりに重厚なSF映画を観させていただきました、ありがとうございます、というのが感想です。 ちょっと長いのですぐは無理ですが、もう一度観なおしたいと思いました。